連載コラム:動物愛護の現状


第3回『産業動物の福祉シリーズ1:鶏肉ブロイラーの福祉について』

 みなさんは唐揚げやフライドチキンはお好きですか?鶏肉は牛肉や豚肉と比べて宗教的なタブーが少ないようです。これが世界中にケンタッキーフライドチキン店が広まった理由だったのかもしれません。加えて、美味しい、栄養がある、そして何より安いということで、育ちざかりの子のいるご家庭では優秀な食材といえます。

 このように私達にとっては、とても馴染みの深い鶏ですが、鶏の習性・生態について 知っている人達はどれだけいらっしゃるでしょうか?以下の知っている項目をチェックしてみてください。

◯鶏の習性・生態

  • コミュニティーを形成しながら生活する
  • 約30羽の群れで過ごし、つつきの順序で階層構造を持つ
  • 記憶力や学習力を持つ
  • 巣を作って産卵する(巣作り行動ができない場合はストレスになる)
  • 雛は母鶏からすべてを学び、自分で巣が作れるようになるまで母鶏と一緒に寝る
  • くちばしでつついて、エサを探したり、水を飲んだり、探索をする
  • 砂浴びは、体表の寄生虫を落とし、皮膚や羽の健康を守り、体温の適正化を助ける
  • 色彩を持つ
  • 走ったり、羽をバタバタ広げたり、蹴りあったりと動くことが大好き
  • 羽を逆立てたり、頭を掻いたり、身体を振るわせたり、羽を伸ばし広げたりすることは、鶏にとって、大切な行動
  • 夜間は、仲間と止まり木に止まって休息する。野生下では、外敵から身を守り、 体力を維持する
  • 平均寿命は約10年

いくつ正解できましたか?

 

以上のことを踏まえて今回は、鶏肉ブロイラーの福祉について考えてみます。

◯ブロイラーとは?

 肉をとるため品種改良して、生後50~55日ほどで体重2.5kg~3kgに達すると食肉用に処分される雑種の鶏です。ピヨピヨのひよこが約50日齢でお肉にされます。鶏の平均寿命は10年ですので、あまりに短い一生といえるでしょう。

◯ブロイラーの生活

 ブロイラーの99%は、平飼いですが、1平方メートルに約16羽が生活するような過密飼育です。肉をとるのが目標で彼らの生活の質は犠牲になります。運動させない、一日中照明をつけて採食を促す、鶏の習性である群れ作りも無視。とにかく体重が2.5~3.0kgになるまで約55日間がまん・苦痛の連続です。

 床の敷物は汚れ、足の裏には傷がつき、疼痛からのストレス、体重の過多から骨格や筋肉が整わず、歩行困難から起立不能、また心疾患も多発傾向にあります。鳥は酸素要求量が多いため、換気は必要であり怠ると呼吸器病にもなり、熱中症にもなります。

◯ブロイラーの輸送

 ブロイラーは約55日齢で、食鳥処理場に出荷されますが、処理場までの輸送がかなり過酷です。大型トラックに積まれるときのケージ内は、農場以上に過密な状態でそのケージは何段にも重ねられて輸送されます。空調設備がないトラックでは、夏はより過酷なものとなります。

 そういった熱中症を避けるため、日が昇る前に輸送したとしても、食鳥処理場では処理されるまで積荷の状態で待機しなければならず、待ち時間が長くなれば意味がありません。

◯鶏の福祉について

 鶏ブロイラーの置かれている環境は生まれてから死ぬまで、つまり一生過酷です。日本では戦後、合理化が推奨されてきました。そのため、産業動物農場では、生産性を求め、安価に大量に出荷する工場的生産が目標とされ、動物の福祉は長い間、無視され続けられています。私達の食卓に並ぶ鶏肉の多くが、鶏の適切な環境や習性を奪った結果であることを忘れてはなりません。

 お肉にすることが悪いのではないのです。生まれてから命をいただくまでの間の飼養環境が劣悪であること=低福祉であることが問題です。

 ストレスのない環境で飼養されたお肉は安全であるだけでなく美味しいとの報告もされてきています。人間の健康は健康な産業動物や新鮮な食材からつくられます。健康な産業動物は「心身ともに健康であること。つまり、その種の動物の生理・生態・習性にあったストレスのない環境で飼養されること」です。そして私達、人間の健康はそういった産業動物の健康に支えられているということを知ってください。

◯消費者ができること

1.無関心からの脱却

まずは、鶏肉などの畜産製品をいただくときに、「この子はどういった環境で飼われてきたのだろうか・・・生きている間はストレスなく過ごせていたのだろうか・・・」と考えてみることからはじめてみましょう。

2.行動をおこす

スーパーで畜産製品を選ぶとき、できるだけ、動物福祉に配慮した環境で生産されたものを選びましょう。お肉については、まだ難しいとは思いますが、卵については、スーパーによっては平飼いの卵とそうでない卵を選べるようになってきています。

 

真の「食の安全・安心」は産業動物の置かれている環境からです。まず、できることから少しずつはじめてみませんか?


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